バイオガスプラントの熱交換器と加温・殺菌工程
バイオガスプラントの原料の加温・殺菌、メタン発酵槽の温度維持などに使用する熱交換器は、詰まりにくく、腐食にも強いものを選択する必要があります。
また、熱交換器の熱源として、できるだけ効率良く熱利用できるシステムにしておくことが重要です。
メタン発酵槽の加温方法
1990年代頃までの農業用の小規模なバイオガスプラントでは、メタン発酵槽壁面内側や外側に何重にも巻きつけたチューブに温水を流すことで、メタン発酵槽を加温する方法が主流でした。
しかし、この方法では発酵槽内の温度にムラができ、時間の経過とともに効率も劣化するため、近年では採用されることが少なくなってきました。
スパイラル熱交換器などを使用して、発酵槽の外部で原料を加温する方法が今日では増えつつあります。
このような方法を採用することで、今まで以上に発酵槽の状態を最適に保つことができるようになっただけでなく、より大きな熱量を必要とする殺菌工程も効率的に行なえるようになりました。
殺菌用の熱交換器
ドイツでは、食品残渣を原料とするバイオガスプラントや、食品残渣を原料としなくても複数の畜産農家の糞尿を集約して処理するバイオガスプラントでは、原料を殺菌することが義務付けられています。
殺菌温度と保持時間は州によってことなり、70℃で1時間、あるいは90℃で30分などの規則がありますが、一度に大量に処理しなければならない大規模な集約型プラントでは、特に高性能な熱交換器が必要になります。
1990年代に建設された、デンマーク式と呼ばれるような集約型のバイオガスプラントでは、巨大な二重管式熱交換器が一般的に使用されていました。
しかし、この方式では途中で原料が詰まることが多く、一度詰まってしまうと詰まりを取り除くことが簡単ではなく、殺菌工程に多くの問題を抱えたまま運転を続けていたバイオガスプラントも少なくありませんでした。
しかし、近年では詰まりのトラブルが少なく、たとえ詰まっても詰まりの除去が簡単なスパイラル熱交換器が使われることが多くなりました。
従来の二重管式熱交換器に比べてトラブルが少ないために稼働率が向上しただけでなく、効率が良く、コンパクトになったため、プラントの建設コストを抑制することにもつながりました。
このスパイラル熱交換器を使用することで、原料の加温、殺菌、メタン発酵槽の温度維持をより効率よく行なうことができるようになりました。