バイオガスプラントのガスホルダーとガスシステム
ガスホルダーにも消化液貯留槽やメタン発酵槽を兼ねた形のものや、単独型のもの、また、外殻がメンブレンのものや、スチールタンクのものなど様々なタイプがあります。
これらタイプの選択や、ガス貯留容量の決定に際しては、脱硫システムなどガスシステムのレイアウト、コジェネ設備などのガス消費量と、その運転パターンなどを考慮する必要があります。
デュアルパーパスタンクと単独型のガスホルダー
ドイツにおいては、ほとんどのバイオガスプラントは、最もシンプルでコストがかからない生物脱硫をしているため、消化液貯留槽あるいはポストダイジェスションとも呼ばれる、メインのメタン発酵槽の後のタンクの上部をガスホルダーとする、デュアルパーパスタンクの方式が多く見られます。
下水処理場などでは単独型のガスホルダーが採用されていますが、一部のバイオガスプラントでも単独型のガスホルダーが採用されているケースがあります。
デュアルパーパスタンクのルーフ
ドイツにおいては、デュアルパーパスタンクのルーフは、最もコストを低く抑えることができる、ダブルメンブレン式を採用する場合がほとんどですが、日本のように台風の強風により被害を受ける可能性が高い場合は、ステンレスやFRPによるルーフが適しているかもしれません。
単独型ガスホルダーの場合の、ダブルメンブレン式とタンク式
ダブルメンブレン式の場合、設置も簡単ですが、外殻のメンブレンの形状をドーム状に保つため、常時ブロアで膨らませておく必要があります。
外殻をタンクにした場合は、ダブルメンブレン式に比べて、タンクを組み立てる手間がかかりますが、タンクの中にガスバッグを吊リ下げるだけですので、外殻の形状を保つためのブロアは必要ありません。 また、台風などの強風に対しても安全性が向上するとともに、耐候性も向上します。 タンクの材質は、エポキシコーティング亜鉛鋼板や、ステンレス製など、設置場所の環境に合わせてグレードを選択することができます。
下水処理場のガスホルダー
ヨーロッパでは、下水処理場に設けられたガスホルダーには、ウェイトを付けて常時ガスバッグに圧力をかけ、ブロアーが無くてもガスエンジンに一定の圧力でガスを供給できる方式のタンクがよく採用されています。
ガスホルダーの貯留容量について
ガスホルダーの貯留容量については、それぞれのプラントの設計思想によって異なってきますが、できれば最低でもガス発生予定量の3時間分以上を確保することが望ましいです。
バイオガスプラント建設コストを少しでも抑制するために、ガスホルダーをできるだけ小さくしようとする考え方もありますが、あまりに小さくしてしまうと、ガスの発生状態があまりよくない時や、プラントに何らかのトラブルがあってあまり負荷をかけられないような場合、コジェネ設備等の運転とのバランスがうまくとれなくなり、コジェネ設備などのトラブルが起きやすくなる可能性が高くなります。
そのような事態を招いてしまうと、かえって後から余分なコストがかかってしまうことになりかねません。
ガスシステム
ガスフレアや、ガスエンジンへバイオガスを供給するためには、ガスブロアが必要です。 また、ガスブロアは各部で必要とされる圧力でガスを供給することができるよう、コントロールされなければなりません。
更に、脱硫システムやガスドライヤーなども設置される場合は、これらも正しく機能できるようガス供給ラインを構成する必要があります。
1990年代までの小規模なプラントでは、ガスホルダーからガスエンジンまでの配管距離をできるだけ長くすることで、その間でできるだけガスの温度を下げて少しでも水分を除去する程度の工夫だけで、正規のドライヤーを設備することは稀でした。 しかし、バイオガスプラントの規模が大きくなり、ガスエンジンも大型化するに従い、高価なエンジンのトラブルを少なくするために、ガスドライヤーを設置することが、今日では一般的となっています。