バイオガスプラントの失敗例
かつては、使用する機器の技術レベルが今日ほど進んでいなかったことや、バイオガスプラントについての経験が豊富でなかったことなどから、様々なトラブルがあったようです。
しかし、今日では各種機器類の技術レベルも向上し、バイオガスプラント専門のエンジニアリング会社も次々と新たな課題に取り組みながら、バイオガスプラントにかかわる経験を積み重ねてきたため、正しい情報に基づいて、正しい手順でプラント建設を行なえば、失敗する可能性はほとんど無いと思います。
タンクと撹拌機の選定が不適切なために失敗した例
メタン発酵槽が縦型の場合、センターミキサーでの撹拌が最も理想的であると思いますが、採用するタンクのタイプによっては、構造的にミキサーをルーフに据え付けることができるだけの強度が無い場合があります。
このような場合、タンクメーカーによってはタンク側面に固定するタイプの撹拌機や、メタン発酵槽内に水中ミキサーを入れての撹拌を提案することがあります。 しかし、投入する原料によっては、このような撹拌方法では、センターミキサーに比べて効率が悪くなるだけでなく、藁などのように軽いものが発酵槽の上部に浮き上がったまま底に沈み込まなくなってしまいます。 このような状態が長く続くと発酵槽内上部に藁などの浮遊物の分厚い層ができてしまい、ガスが出にくくなってしまったり、ガスや消化液の出口が詰まってしまうなどのトラブルが発生してしまうこともあります。
バイオガス配管に十分なドレン対策をしていなかったために起きたトラブルの例
このプラントでは当初バイオガスの配管に十分なドレン対策と保温工事が十分に行なわれていませんでした。 そのため、配管内に大量のドレンが溜まり、冬季にドレンが凍結したために配管が詰まってガスが流れなくなってしまいました。
もちろんすぐに適切な対処を行い、今では順調に稼動していますが、ドレン対策、配管のプランニングも慎重に行なう必要があります。
大量の砂、小石や異物などが持ち込まれたために起きた二次的トラブル
原料の家畜の糞尿と一緒に砂、砂利やネジ類などの異物もメタン発酵槽に持ち込まれてしまうこともありますが。 バイオガスプラント設計時にその持ち込み量が多いことを想定していない場合、プラント稼動後数ヶ月〜数年で砂や砂利などが大きなトラブルの原因となることがあります。
原料の加温あるいは殺菌のために使用している熱交換器が、原料と一緒に持ち込まれた砂や砂利などによる摩擦で磨耗し、穴が開くなどの破損をする可能性が高くなります。 熱交換器に穴が開いてしまうと、ガスエンジンからの温水で原料を加温している場合、開いた穴から異物を含んだ原料が温水のラインに流入してしまいます。 一旦そうなってしまうと、エンジンの温水ラインにも異物の混入が増え、今度はエンジンの冷却水と温水の熱交換を行なうプレート式熱交換器にも穴があいてしまい、その穴から原料と混ざり合った温水がエンジンの冷却水の回路に流入してしまいます。
そうなると、次に起こることは、冷却水の不凍液の濃度が温水と原料によって薄められて、凍結防止の効果だけでなく、防錆効果も損なわれてしまい、エンジンを傷めてしまう原因となってしまいます。 更に、原料と一緒に流入した異物によってエンジンの冷却水ジャケットが傷付けられてしまいます。 そして最後には、最も弱いガスケットの部分が損傷し、そこから冷却水が漏れてエンジンが焼き付いてしまうという最悪の事態を招いてしまいます。
ドイツにおいても、養鶏場の鶏糞を原料とするバイオガスプラントや、分別収集されていない有機性廃棄物を処理するバイオガスプラントなど、通常よりも砂や異物などの持ち込みが多くなることが予測される場合は、極力メタン発酵槽へのそれらの持込を少なくなるような工夫がなされている例があります。